ブルース:ブログ3

第11話: 2005.06.18 Saturday

フェントン・ロビンソン 名盤のはずが・・・

THE GETAWAY The Getaway

 

このアルバム「The Getaway」は1970年代の後半に買ったと思います。つい最近になって聴き直すまでは、買った当時に5回くらいしか聴いていませんでした。
名盤の「サムバディ・ローン・ミー・ア・ダイム」を聴いた後では、聴くに堪えない、最悪に近いアルバムだと思っていました。

一番の理由は、ギターの音が大嫌いな音だと言う事で、それも、フェントン自身が弾いているのではなく、ロック系のスタジオ・ミュージシャンではないかと思われます。
フェントン自身が弾いているなら(勿論こんな音で弾くとは思えませんが)、革新的なフェントンが、「何かにチャレンジしているのか」などと、良い方に考えられない事もないのですが・・・
実際はそれも無理がありますが・・・

あと、プロデュースがそのバンド(おそらくハウスバンドかな?)のベーシストで、楽器の数や、ホーンのアレンジなどにしても、やたらと入れている印象が強く、フェントンの持ち味を生かさない方向に持って行こうとしているとしか思えないのです。
それで、最近になり、押し入れからこのアルバムが出てきたので、良い印象は無いのですが、貴重なフェントンの音源だと思い、再度聴き始めたわけです。
それで、半分は我慢をしながら、数十回聴き直しました。
ついでに解説文などを読んだりして、当時を思い出しますと、同じレーベル「セブンティ・セブン」から、これよりひどいのが出ていました。

で、私はそれ(マンデーモ-ニング・ブギ・アンド・ブルース)は買わずにこちらを買ったわけですが、こっちがこれですから、そっちはどれだけひどいのか・・・

それで、その両方(セブンティセブンの全録音と思われます)が入っている、下のアルバムを見つけました。何でこんなのを取り上げるかというと、すごく安いからです。

19曲も入ってますが、私は上記のアルバム9曲しか聴いていません。その9曲のうち、フェントン自身がギターを弾いているのが半分くらいで、あとは歌のみと言う事です。
それで、改めて感じたのは、やはり歌の上手さで、半端な上手さじゃないのですね。全曲ではないですが、タイトル曲の「ゲッタウェイ」などは、ホント凄いです。これでギターもフェントンなら、最高の曲になるのですが・・・
こんなバックで、自分でギターも弾けないとなると、テンションも落ちるものですが、それでも頑張って歌っている曲などは泣けますよ。情けなくて・・・

そんな曲がほとんどなのです。とても、もったいない事です。
やはり稀有のブルースマン「フェントン・ロビンソン」は、歌ってギターを弾いて、初めて最高のパフォーマンスなのですね。

今更、「たら」や「れば」を言っても仕方ないですが、アルバム「The Getaway」に関しては、フェントンが全曲ギターを弾いていれば、間違いなく名盤でしょう。
フェントン・ロビンソンの初録音は1957年の「ミティア・レコード」で、以後マイナー・レーベルですが、レベルの高い作品を残し、67年には名曲「サムバディ・ローン・ミー・ア・ダイム」をパロス・レーベルから出しています。

そして69年から5年契約で、この「セブンティセブン」に在籍するわけですが、細かい事は抜きにして、71年に8曲録音された、ナッシュビルでの録音が評判悪いようです。
同じ71年のメンフィスでの録音8曲は、そこそこギターは弾いていて、その内の6曲と、69~70年に録音された3曲で、アルバム「The Getaway」は構成されています。

まあ、700円台なら買ってもいいのかな、と言うアルバムです。いや、曲の良さとヴォーカルの良さで、聴く価値は充分あります。(最近の本心)

他の10曲は聴いていないのでコメント出来ませんが、数十回も続けて聴いていたら、私、アルバム「The Getaway」が好きになりました。(本心です)

Mellow Fellow Mellow Fellow

Fenton Robinson

アルバム「The Getaway」だけの曲を抜き出しますと、
A:
1.The Getaway (ヴォーカル最高。ギターフェントンなら100点)
2.Mellow Fellow(マイナー・スローでギターも良い100点)
3.I Wanna Ooh!(シャッフルナンバー結構良い80点)
4.The Sky Is Crying(これもフェントンのギター聴きたい)
5.I'm Not Through Loving You(バラードタイプでこれは歌良いな~)
B:
1.Little Turch (スローブルース。まあまあ80点)
2.Sideman (ソウル・ダンス・ナンバーで時代を感じる80点)
3.Let Me Come On Home (B3と同じタイプのバラード85点)
4.She's A Wiggler (これはノリもギターも良い90点)

結構高評価になったな~・・・

あと、ギターは弾いていないけど、A5とB3でやってる、バラードタイプは、他のアルバムではあまり聴けないような感じで、なかなか歌も良いし、ホントに気に入ってきたな~。

第10話: 2005.06.12 Sunday

マジック・スリムの2 (続き)

Black TornadoBlack Tornado

Magic Slim & the Teardrops

前回、コンスタントにアルバムが出ていると書きましたが、スタジオ録音で、

Highway is My Home (Black and Blue, 1978)
Live'n Blue (Candy Apple, 1980)
Raw Magic (Alligator, 1983)
Gravel Road (Blind Pig, 1990)
Scufflin' (Blind Pig, 1996)
Black Tornado (Blind Pig, 1998) 私、これ好きです。
Snakebite (Blind Pig, 2000)

と出ています。さらに、例のシリーズ「Zoo Bar Collection」があり、それ以前のライブがいくつかありますから、70年代~2000年頃までのブルースマンでは、かなりの数だと思います。バディ・ガイやオーティス・ラッシュでも10年くらい録音してない時期がありますから、それから考えても凄いなと思いますね。

デビュー・アルバムのメンバー

どこに人気の秘密があるんでしょうか。
私なりの考えですが、顔と雰囲気が、正にブルースを感じさせてくれるのが一番で、次に、怖そうだけども、気の良いタイプを思わせる。(実際はわかりません)
そして、結構シタタカなのかな?と言うところです。

「気が良い」と言うのは、ライブでもリクエスト曲があると、かなりやってくれるらしいです。
で、シタタカなのかなと思うのは、上の裏ジャケットに曲目がありますが、私が買った時に、まずアルバート・キングやビー・ビー・キングの曲をはじめ、馴染みのある曲が多かったので、買ってみたわけです。

それで、コンポーザー(曲を作った人)を見たら、7曲中5曲に「Morris Holt」とあるんですね。これってマジック・スリムの本名です。

それで、よく見たらアルバート・キングの「DON'T BURN DOWN THE BRIGDE」と思っていたのが、「BURN DOWN THE BRIGDE」で、「DON'T」が無い。

さらに、アルバートの「BORN UNDER A BAD SIGN」だと思っていたら、「BORN ON A BAD SIGN」で、下か上かの違い・・・

「これは反則では無いのかな~」などと考えた次第です。

で、曲はそのままアルバートと言う感じで、ギター・フレーズまでやったりしてます。

あと、上のジャケットの写真の下2枚は、実の弟で、おそらく無理やりやらしてるのでは?などとも思いました。あまりやる気無さそうだし・・・

でも、ベースの「Nick Holt」は後々まで付き合ってます。

最後に、マジック・スリムのジャケットって、どれもアップに近い自分だけのが多いです。結構「俺がブルースだ!」って感じで、聴いてみたくなりますね。ブルース好きとしては。

まあ、こんなタイプのブルースマンは、もう出ないだろうな~、戦前生まれの「サン・シールズ」くらいかな、対抗できそうなのは。

第9話: 2005.06.11 Saturday

マジック・スリム。これぞ60年代から続くシカゴ・ド・ブルース

マジック・スリム

前回のマジック・サムのクラスメイトで、サムのバンドでベースも弾いていたと言う、まぎらわしい名前の「マジック・スリム」のデビュー・アルバムです。60年代のシングルも、どこかで見た事がありますが、正確にはわかりません。50年代からシカゴに出て、サムについていたりしたようですが、音楽的な評価は低かったようで、郷里に戻ったりしていたようです。

マジック・サムの録音に参加してるのかは分りませんが、彼自身は60年代頃も、地道にライブ活動をしていて、それが76年のこのアルバムで認められたようで、メジャーな存在になったようです。

勿論起伏はありますが、その後もコンスタントに録音があり、相当数のアルバムが出ています。特に82年の「グランド・スラム(Grand Slam)」の評判は高いです。

スタジオ録音に加えて、ライブ盤がかなりあり、CDでは以前にパワー・ブルースの方でご紹介した「BLUES FROM THE ZOO BAR」を含む「Zoo Bar Collection」と言うシリーズの様なのがあり、「Vol.5」まであります。

このアルバムもライブのようです。と言うか、ライブです。「マディソン」とあるので、ニューヨークだと思いますが、フランス盤なのでよくわかりません。一応、曲間に数人の拍手が入るので、きっとライブ・ハウスでしょう。(信じられないくらい少ないですが・・)

最初に聴いた時は、「雑なバンドだな~」と言うのみで、それ以上のものは感じませんでした。ドラムは走るし、ベースもサイド・ギターも取って付けた様な・・・・

一つ魅力があるのは、「ヴォーカルが太いのと、ギター・ソロをいかにも握力のありそうな音でガンガン弾いてくれることかな」くらいに思ってました。

このアルバムの録音は1976年で、私が買ってきたのが80年代の初め頃だったと思いますから、数年遅れで聴いたわけですが、当時は「こんな荒い、チープなサウンドでやってるバンドが今時あるんだな」が正直な感想でした。

その時一緒に買ってきた、「マジック・スリム&ザ・ティアードロップス」としてのライブの方が、かなり気に入って聴いてました。
(これはパワー・ブルース・サイトで紹介してます。少し訂正しないと・・・、3年前に書いてそのまま・・)
これもCDを探したら、上述のシリーズに組み込まれていたいたわけです。

これが「Born on a Bad Sign」に5曲追加されたものです。
Magic Slim, Vol. 1: Born on a Bad SignMagic Slim, Vol. 1: Born on a Bad Sign

(今、リンクチェックしたら在庫切れでした・・・)

で、上述の「BLUES FROM THE ZOO BAR」を含む「Zoo Bar Collection」と言うシリーズの様なもののVOL.2がこれです。こっちは、ジョン・プライマーと言うサイド・ギタリストに替わっていて、70年代後期から80年代初期頃の雰囲気の良いライブで、かなり良いです。出来ればシリーズ全部聴きたいところですが、取り合えずこれを。

Zoo Bar Collection Vol.3

第8話: 2005.06.10 Friday

マジック・サム。やっぱり天才! 一番可能性を秘めていた人

マジック・サム

この人は本当に期待していました。ブラック・マジック:BLACK MAGICが最後のアルバムですが、このアルバムはまだご紹介していませんでした。亡くなってから数年して出たもので、デビュー作のコブラ・レコードのもの(1957~1958年頃)です。

実は近年までそれほど良いと感じなかったんですね。当時(60年代後期)すでに「デルマーク」から、名盤と言える2枚のアルバム(ウエスト・サイド・ソウルとブラック・マジック)が出ていて、オムニバス(スィート・ホーム・シカゴ)でも最高のテイクが聴けましたから、10年近く古い録音をそれほど聴きたいと思わなかったわけです。

同じ頃に録音されたコブラ時代では、「オーティス・ラッシュ」の方が、あまりにもインパクトがあったので、つい、そっちに行ってしまったんですね(ラッシュはライトプレイス・ロングタイムが出るまで良いのが無かった)。

それに、前後して「伝説的なライブ」が出たので、向こうも録音が悪いですが、それ以上に内容が凄かったですから、このアルバムが浮いてしまったわけです。

マジック・サムが亡くなったのは、1969年の暮れでしたから、本当に短い期間(10年と少し)しかレコードが無いのですが、70年代に生きていたら一番聴きたい人ですね。

で、このアルバムを聴いて、20歳くらいですでに、やってる事が斬新で完成度も高い事に改めて驚くわけです。それで同じ様なアルバムを探したら、デルマーク移籍以前の「クラッシュ・レーベル」での最高のテイク「Out Of Bad Luck」を含む、上のアルバムに17曲も追加されたCDが出ていました。これはかなり欲しいです。

返す返すも、「70年代にどんな事をやったのかな~」と思います。実際はそれほどの事はやらなかったかも知れませんが、存在だけでも周りの人達に与える影響もあったでしょうしね。ラッシュ、バディ・ガイとか、似た名前の「マジック・スリム」とのカラミとかね。(スリムはサムの同級生で、サムのバンドでベースも弾いていました)

アウト・オブ・バッド・ラック・・ザ・コブラ、チーフ&クラッシュ・セッションズ 1957-1966アウト・オブ・バッド・ラック・・ザ・コブラ、チーフ&クラッシュ・セッションズ 1957-1966

マジック・サム