レコードの始まりの頃

レコードの始まりの頃

当サイトで御紹介しているレコードは、リズム&ブルーズ時代(戦後に生まれた言葉と聞きますが、1930年代からそう呼ぶ人もいます)の頃からのもので、特に1950年頃から〜1970年代までのバンド・ブルーズが多くなります。私自身、それ以前の事はあまり詳しくはないのですが、全体の大雑把な流れを知っておいた方が、分かりやすいと思いますので、簡単ですが触れておきたいと思います。

■録音について:
 録音する機械は、トーマス・エジソンが1878年に特許取得(これ以前にも録音をした人はいますが)をしていますが、商業的なレコードが可能になるのは、10年後になって、それまでの円筒型の記録メディアが円盤型に改良されて、大量にプレスが可能になってからです。しかし、まだマイクロフォンは無く、集音用のラッパから直にカットするもので、楽器によっては良い音が取れず、声楽的なものが主だったようです。勿論、手動の蓄音機で聞いていました。  1900年頃には世界的にレコードは発売されていたようです。このあたりの詳細はわかりませんが、日進月歩で改良されたのでしょう。1925年になりマイクロフォンが出来て、電気的に録音が可能になり、クオリティも格段に上がりました。
■時代背景:
 映画などを見ていると、1900年頃のアメリカは欧州からの移民や、マフィア、ギャングが良く出てきます。そして、キャバレーなどで演奏するショー・バンドなどを良く見かけます。20世紀になって、夜遅くまで営業する店が増えてきました。大衆音楽の発展するもう一つの場が出てきたわけです。  シカゴ、デトロイトなどの北部工業地域に移住する黒人も多くなり、また、1920年頃にはラジオ放送も始まり、音楽情報も全米に伝わるようになります。さらに、禁酒法が1919年に始まり、有名なカポネやアンタッチャブルの時代、そして大恐慌と、暗黒の時代になったわけです。そんな背景から、白人のバンド、黒人のバンド、混成のバンドなどの多様化、昔ながらの旅興業、一人放浪するブルーズマン、田舎のジョイント(安酒場)などで演奏する人など、都市、地方により、さまざまな音楽スタイルが生まれてきました。
■ブルースのレコード:
音楽的には、時代が下るにつれ、楽器を所有できる黒人も増えてきて、管楽器などを演奏出来る人も増えてくると、ブルースの器楽的なものも広がります。ジャズの原形が出来てきます。一般的にニューオリンズがジャズの起源として言われますが、そんなに単純ではなく、もっと色々な所で色々なスタイルで進化、融合してきたものだと思われます。これも、1900年頃にはバンド形態をとったものがあったようです。旅興業とかも色々なスタイルが生まれ、1920年頃には興業を仕切る組織(TOBA)も生まれます。その頃迄のブルースは、ギターやバンジョーを弾きながら歌うカントリースタイルが普通でしたが、バンドをバックに歌う歌手も出てきました。この様な、バンドをバックにして歌う歌手は女性がほとんどで、男性は弾き語りが多かったのです。そして、最初にブルースが録音の対象になったのは、前者の方でした。アメリカの大衆がブルース音楽を知ったのは、MA RAINEY(マ・レイニー)などの女性歌手のレコードからでした。

 "BESSIE SMITH"(ベッシ−・スミス)は、1923年から1931年までコロムビアで160曲程の録音をしています。ルイ・アームストロングも1年後にフレッチャー・ヘンダ−ソン楽団に入ります。ベッシ−・スミスの伴奏もしています。そして、彼女に認められて、ビリー・ホリディが出てきます。ですから、この頃のブルースに対するアメリカ全般の認識は、彼女達が歌うスタイルのブルースでした。

■南部:
 最初に録音された弾き語りのカントリー・スタイル歌手は、1924年頃ですが、成功したのはテキサスの『ブラインド・レモン・ジェファーソン』の1926年が最初のようです。この後からフィールド・トリップ(現地での録音)が始まり、南部の音楽(ブルーズも含む)がレコ−ドとして紹介され始めます。
当サイトが最も多く取り上げるブルーズスタイルであるシカゴブルーズの原点は、南部のデルタ地帯にあります。そして、その元祖的に言われる人が"CHARLIE PATTON"(チャ−リー・パットン)です。この頃の南部の黒人の記録は、正確な生年はもとより、録音年などの信憑性も危ぶまれますが、1929年〜34年の間には、かなりの録音をしているようです。
"SON HOUSE"(サンハウス)も、1930年に初録音をしています。(この人の録音は少ないのですが、60年代に再び発見され、録音を残します。)サンハウスはロバート・ジョンソンにもギターを教えたりしている人です。

ロバート・ジョンソン
ROBERT JOHNSON

デルタ・ブルーズで最も有名と思われるロバート・ジョンソンは、1936年から録音があるようです。ロックの人達に多くカヴァ−された事で、私などもよく聞いた人です。若くして亡くなった事や、写真が残っていないなど(後に発見)、伝説的な存在でした。哀愁を帯びた声と共に、イラストジャケットが非常に印象的でした。南部では、ホテルの一室などを借りて、こんな感じで録音をしていたのですね。