メンフィスは南部と北部の都市の中継点で、いろんな人が行き来した都市ですから、きっと面白い状況が沢山あったのではないでしょうか。スタイルを見ても、ブルースは勿論の事、ウエスト・コースト的な感じがあったり、泥臭さと都会的な感覚が一緒になったような感じがします。60年代になって出てくる、ソウルも『スタックス』『ハイ』に代表されるように、洗練されきれていないところが魅力です。 メンフィスではR&Bの少し後の世代が多く活躍しました。カンサスやテキサスのジャンプ・ブルース、「ルイ・ジョーダン」や「T・ボーン・ウォーカー」は1910年頃の生まれです。、それよりも一回り以上年下の、B・B・キングと同じ世代の1925年前後生まれの人達です。1950年頃に多くの優れたブルースマンが集まります。 ただ、日本ではシカゴ・ブルースほどには紹介されなかったですね。B・B・キングだけは有名でしたが、ボビー・ブランド、ジュニア・パーカーと言った人は、日本盤が出るのはかなり遅かったと思います。私のもほとんど輸入盤でした。 1940年代のウエストコーストから始まったR&Bは、全国に広がりながらも、土地がらでその度合いが異なります。イーストコーストの「ジョー・モーリス」やニューオリンズの「デイブ・バーソロミュー」などのバンド(楽団)リーダーが牽引役となり、アフター・ビートの強いリズムに進化し、早い時期にR&B化していったのに対し、メンフィスなどの南部都市では、ブルースの人気が高くて、なかなかR&Bへと移行するのには、時間がかかりましたし、逆にその事がメンフィスの良い所かもしれません。 メンフィスのバンドで思い浮かぶのが「アイク・ターナーとビール・ストリーターズ」ですが、前者はアイクがリーダーのバンドで、ボーカリストをフィーチャーしてやっていますが、後者はソロで活動している実力者達が集まったセッション的なバンドで、正式に録音されたレコードも無いと思います。 そのメンバーはと言えば、「ビー・ビー・キング」「ロスコー・ゴードン」「ジョニー・エイス」「ボビー・ブランド」「アール・フォレスト」などらしいですが、実際このメンバーでのライブなどなら、本当に凄いことですね。 当時はまだ若かったですが、後には「ボビー・ブランド」「ジュニア・パーカー」と言った人達は、アメリカではビッグなスターで、ステージも大きいところをやれました。ライブ・ハウスというよりも、クラブやホールなどですね。その様な所で客を呼べる人はそれほどいないですし、ブルースマンの間でも人気の高い人達です。たとえばマジック・サムの「スィートホーム・シカゴ」のテイクもジュニア・パーカーがお手本と思いますし、エルヴィス・プレスリーも随分と参考にしたはずです。「ミステリー・トレイン」もカヴァーしてますしね。 ビー・ビー・キングの出身は南部ですが、親類にカントリーブルースマンの「ブッカ・ホワイト」がいたりするくらいですから、音楽環境はあったようです。けっこう早くからエレクトリックで自身のスタイル(スクィーズ・ギター)を作ってます。 |