ブルースに限らず、ロックギタリストにも多大な影響を与えた人です。1960年代の後半頃のアメリカでは、アルバート・キングを知らない、ロック・ミュージシャン、特にギタリストは、まずいないと思います。
アルバート・キングは左利きの人ですが、右利き用(つまり普通のギター)と同じに弦をはった「ギブソン・フライング・V」を、ピック無しの太い指でガンガン弾きまくります。どんな曲でも常に同じようなフレーズ(これが良いのですが)を「これでもか」と言わんばかりに押し通します。まさに、パワー・ブルースですね。
時々、大味なギターと言う人もいますが、それは好みに合わないだけでしょう。独特の「間の取り方」と、「独特のタメ」を持つチョーキングを織り込んだフレーズは、今では難しいテクニックではありませんが、当時のギター弾きは、かなりの驚きで、引き付けられたと思います。
1970年頃と言うと、私は白人のブルースをよく聴いていました。ビートルズから、ストーンズ、チャック・ベリー、エリック・クラプトンがいたクリームなどを聴いて、10代の後期には、アル・クーパー、マイク・ブルームフィールドなどの、フィルモア・セッションなどをよく聴きました。
すでに、アルバート・キングも、フィルモアでライブをやっていて、それは、数年してから、やっと聴く事が出来ました。その前に、スタックスのスタジオ盤の方で聴いて、「モゴモゴ」した歌い方と、その「モゴモゴ声」と対照的な、ソリッドなイメージのギターが、聴くたびに好きになりました。
あの当時の、凄いロック・ミュージシャンからも、特に絶賛されていたマイク・ブルームフィールドが、「アルバート・キングを聴いた時は、そのギターのカッコよさに驚いた」と絶賛しています。
余談ですが、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの、『チェンジ・イット』のビデオクリップがテレビで流れていた時、イントロを聴いて『お!、アルバート・キングだ!!』と思わず言ってしまいました。それ程よく似ていましたし、それほど影響を与えてます。
そして、同じ様な事は、スタックスのスタジオ・メンバーであり、アルバート・キングの「ボーン・アンダー・バッドサイン」でのプロデュース、ドラムのアル・ジャクソン。そして、ベースのドナルド・ダック・ダンも絶賛しています。
もちろん、他の人達も同じでしょう。数々の名演・名曲を生んだ、スタックス・レコードのこの人達は、「ブルース・ブラザース」でも、かなりふれましたが、本当に凄い人達なのです。私など40年経った今でも、よく聴いています。
1923年(24年説あり)にミシシッピー州サンフラワー郡インディアノーラで生まれ、育ったのは主にアーカンソー州のようです。ビー・ビー・キングもインディアノーラ近く出身で、イトコ説もありましたが、違うようです。独学でギターを覚えましたが、彼の場合、左利きでしたからかなり苦労したと思います。
南部では子供の頃から自分の楽器を持つのは少なく、誰かのを借りたりして覚えていきますから、ギターの場合、弦の張り方をそのまま(右用)でやる人が多いです。ですからコードも逆様ですし、チョーキングも押し上げではなく引き下げる事になります。でも、それが個性を生んでいる事も確かです。
スタックス時代に続々と発表された作品は、ギターのフレーズからサウンド共に、ロック系ブルースギターのお手本です。どこかで影響を受けている人が山ほどいます。私もその一人で、BBキングよりも気に入ってました。 (最近はビー・ビー・キングの方をよく聴いたりしていますが・・・)
これら以前にもアルバムは多数ありますが、60年代後半からの一連のアルバムを取り上げます。CDは全てあると思います。ちなみに、全曲エルヴィス・プレスリーのカバーと言うアルバムもあります。好みの分かれるところですので特別にお薦めはしませんが、私は好きで時々聴いています。
ついでに、すごい巨体です。最近の有名人では、格闘技の「ボブ・サップ」と同じくらいの体格です。売れる前は、アルバイトでレスラーもやっていたらしいです。(ボクサーだったかな?)録音を始める前は、ジミーリードのバンドでドラムをやっていました。
初録音は1953年に「パロット・レーベル」で、「BUD LUCK」「MERRY AWAY」の2曲をやり、シングルで35万枚くらい売れましたが、結局ギャラももらえず、「ボビン・レーベル」で1961年になり「DON'T THROW YOUR LOVE ON ME SO STRONG」を録音し、「キング・レコード」からリリースされました。R&Bチャートでは14位を記録しました。この間も8年と随分ありますが、かなりの苦労人なのです。
66年にスタックスと契約して、以後はレコードからライブから大ブレークして、まさにキングになりました。メデタシです。ちなみに、アルバートが影響を受けたという人は、アーバン系のブルースマンがよく挙げるテキサスのブルースマンが多く、「ブラインド・レモン・ジェファーソン」「T・ボーン・ウォーカー」さらにテキサス・カントリー・ブルースの「ライトニン・ホプキンス」、30年代シカゴ・シティ・ブルースの「ロニー・ジョンソン」と言ったところで、この人達は実によく挙げられる名前です。あと意外なところで「ハウリン・ウルフ」を挙げていますし、B・B・キングと同じで「エルモア・ジェームス」も挙げています。
前後しますが、67年の名盤で最高傑作盤の声も多いです。曲も有名なものが多くて、親しみやすいです。邦題は「悪い星の下に」と言って、けっこう有名でした。スタックスのサウンドとよく合っていて、ソウル・ロックのエッセンスが凝縮されてます。「BORN UNDER A BAD SIGN」「CROSSCUT SAW」「OH, PRETTY WOMAN」「LAUNDROMAT BLUES」「AS THE YEARS GO PASSING BY」など、代表曲が並んでます。
このアルバムは、すでに発売されているスタジオ盤に収録されていない曲を集めるというコンセプトだったので、インスト物が多いです。
後に、当日演奏されていた、有名曲やヴォーカル物を集めたアルバムが発売されています。
Wednesday Night in San Francisco
Thursday Night in San Francisco
いきなりの、ローリング・ストーンズのナンバーがカッコイイの一語。71年のもので、ロック系のバックがついています。アルバート・キングはいつもと同じですが。「ジェシー・デェイビス」等、アメリカン・ロック、フォーク系の人がバックを付けてます。
I'll Play the Blues for You [Stax]
バーケイズ、メンフィスホーンをバックに独自のスタイルを築き上げている、絶好調時の一枚です。このスタックス時代は、どれも甲乙つけがたい名盤が多く、アルバート・キングのスタイルが一番完成された頃です。
もちろん、ロック・ギタリストなどとも多くのセッションをして、その影響力の大きさは計り知れません。
もしかしたら、これを一番聴いたかも知れません。74年のもので、タイトル通りのファンキーさがたまりません。ギターもトレードマークのフライングVをストラトキャスターに持ち替えて、クリアーなサウンドです。 バックはバーケイズの重い感じのファンク・サウンドです。どんなバックが付いても、いつも同じなのがアルバート・キングです。ブルースマンは皆その傾向が強いですが・・・。
アナログのこれよりも2曲少ないですが、このアルバムです。
Blues at Sunrise: Live at Montreux
録音が良いので。こちらの方をよく聴きました。スタックス時代のヒット曲もやってます。77年ですから、上のライブからは約10年後になります。一部イギリスのブルース系ロック・ギタリスト「ロリー・ギャラガー」もゲスト参加。
アルバート・キングのギターの音が、とにかく良いです。
スタックスからユートピアに遷っての1枚目で、フュージョン系のバックでも、またまたいつものアルバート・キングで、ピュアな感じの音の良さが印象的でした。 録音技術の進歩で、ナチュラルな残響があります。多少おとなしい感じもしますが、聴いていて気持ちの良いアルバムです。 「TRUCLOAD OF LOVIN'」の方は曲が良い感じで、洗練度の高いフュージョンであり、ファンク要素もありでよく聴きました。
ユートピア2枚目で、77年のものです。マディ・ウォーターズの「I'M READY」や、リトル・ウォルターの「MY BABE」など、シカゴブルースの有名曲をやってますが、ギターの音が、スタックス時代よりもクリアでストレートな感じで、私はかなり好きでした。(この辺は好みですね)